クッキングトマトを育てよう

2013年4月26日

  • なぜクッキングトマト

津波で被災した田畑に、周辺から多くのがれきが流入した。そのがれき除去のために栄養に飛んだ表土が一緒に持ち出された田畑が多い。私たちが陸前高田市でお借りした畑も、表土がなく深土がむき出しだった。しかもこの深土は、雨が降ると柔らかいぬかるみになり、乾くとクギを手で刺させないほど硬くなる。こんな土でも育つ作物として、適応力の大きな根を持つトマトに着目した。そのなかでも未経験者が容易に栽培できるクッキングトマトを選んだ。トマトにも多くの種類があるが、生食用トマトやミニトマトは全国にも県内にも産地が多々あって競争が激しい。また収量を上げたり、果実を美味しくするには技と経験も必要だ。沿岸は消費地から遠いので日持ちのするクッキングトマトがよいという流通関係者のおすすめもあった。なんと言ってもクッキングトマトは、これから消費拡大が期待される注目株だ。

トマト畑_web

支柱を立てずに栽培できるクッキングトマト

  • 試験を始めた

クッキングトマトの主力品種「なつのこま」や「にたきこま」は、盛岡市にある東北農業研究センターの育成品種である。また新たに芯止まり系の早生品種「すずこま」もデビューした。そこでこれら3品種を陸前高田で栽培することにした。岩手大学のハウスで育苗した苗を2012年6月13日に現地に定植した(野菜畑通信をご覧ください)。定植の適期は5月下旬だが、畑の準備が遅れてしまった。ベッドの幅を1mとし、「なつのこま」と「にたきこま」は1条植え、「すずこま」は2条植えで、株間は50cmである。試験区は、「化学肥料だけ」、「化学肥料+堆肥」、「堆肥+廃菌床」、「堆肥だけ」、「廃菌床だけ」の5つである。

トマト植え付け_web

「なつのこま」、「にたきこま」(奥)は1条植え
「すずこま」(手前)は2条植え

  • 収穫の結果

定植が遅れたため、収穫は8月2日から始まった。「すずこま」は花房が1段で芯が止まるため、8月いっぱいで収穫を終えた。「なつのこま」「にたきこま」は9月末まで収穫できそうだったが、都合で9月6日に打ち切った。このため下の図では「すずこま」に比べて収量が少ない。収穫の結果は予想通り、肥料をやればあの土でもトマトを採れることが分かった。堆肥を加えるとさらに収量が安定しそうだ。廃菌床は肥料と同じような効果があるが、単独では今一のようだった

収量_図

株当たりの収量 (すずこまは2株当たり)