クッキングトマトを秋どりするコツ

2015年12月25日

「クッキングトマトは,お盆の頃に一斉にとれてしまって」という生産者のグチをよく耳にします。この夏には,「お盆過ぎから9月末まで,トマトを使った限定メニューを出したい」というレストランからの注文もありました。園芸振興班ではこの数年間,陸前高田の野菜畑で,種まきの時期や品種を変えて,収穫期を広げる方法を試みてきました。

早生品種「すずこま」を3月下旬から4月上旬にハウスで種まきし,4月下旬から5月上旬に畑に植えると,7月初中旬から収穫することができます。ところが種まきや植え付けを遅らせても,収穫期を遅くすることはなかなか困難でした。6月や7月に植えると暑さで小さいうちに花が咲いてしまいます。収穫期は多少遅くなりますが,収量が大幅に減ります。おまけに雨の多い時期の定植だから,多湿による活着の遅れや病気が追い打ちをかけて,昨年まではまともなデータがとれなかった。

今年(2015年)は幸い7月に雨が少なく,遅い植え付けの苗も順調に育って,例年になくきれいなデータがとれました。7月定植(6/17播種,7/16定植)は,6月定植(5/12播種,6/11定植)に比べて収量が50〜60%に減りましたが,収穫のピークが6月定植で8月下旬,7月定植では10月まで遅れることが分かりました。とくに品種“なつのこま”のピークは,10月中旬から11月初旬でした。“なつのこま”は暑さや多湿に弱いので,これまで高温期に定植すると,ほとんど育たずに終わってしまいました。この時期を乗り越えれば,本来の特性を発揮するようで,どうやら“なつのこま”を“あきのこま”と呼ぶ方がよいかもしれません。

7月中旬に定植すると10月に収穫できる

7月中旬に定植すると10月に収穫できる

今年の秋は暖かかったという印象が強く,そのためではないかと思うかも知れませんが,陸前高田の気象を見る限りそうではありません。9月と10月の平均気温は,2013年が17.8℃,2014年が16.0℃,2015年は16.2℃でした。秋どりのコツは,畑の水はけを良くして6月,7月の梅雨時に苗をうまく活着させ,その後の病害対策などの管理をしっかりすることです。また秋の低温下で果実の肥大と着色を進めるために写真のような割繊維不織布(商品名:ベタロン)によるべたがけをお奨めします。定植時から被覆すれば,遮光,虫除け,雨よけの効果も期待できます。生育初期の暑さ対策を重視するなら,目合いが1mm程度の防風網や寒冷紗がお奨めです。よく使われる長繊維不織布(パオパオ等)では,夏の高温による悪影響が出ます。

割繊維不織布で虫除け,雨よけ,生育促進,果実肥大・着色を図る

割繊維不織布で虫除け,雨よけ,生育促進,果実肥大・着色を図る

植え付けを遅らせると収量は確実に下がります。だから2条植えの方が良いと考えられますが,2条植えにすると果実が小さくなったり,株当たりの収量が1条植えの半分以下に減ることもあります。この傾向はとくに“すずこま”で顕著でした。畑に余裕があれば,欲を出さずにベッドを広々と使ってください。